JASRACが片づいてもpodcastingは出来ない件

今日のJASRACのニュースを読んで「えっ?ポッドキャストで音楽番組つくれるようになったってこと??」と思っちゃうかもしれませんがちょっと待って下さい。たしかに大きな一歩ですが、ネットと音楽放送の関係、まだまだ課題は山積なんです。
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ポッドキャストもOK」音楽配信に新しい著作権料率・JASRAC、1日発表へ http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=MMITbe000030052006
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それでは上記の記事のポイントをまとめながら、いろいろ語ってまいりましょう。
podcastを「ダウンロード型番組」という新たな概念で受入
これまでの ・ダウンロード型配信 一曲 7.7円
という取り決めでは、
podcast番組だとダウンロード型になり 10曲を番組で使い、月に4回放送すると
1リスナーあたり308円支払
1万人がDLすると308万円支払
10万人がDLすると3080万円支払

なんて青天井になってしまい、 podcast番組はビジネス的に不可能だったのですが、

スポンサーを募って配信できる程度の料率になった。 ラジオ離れの進む若者などへのプロモーションといった使い方が広がるだろう

って豪語するぐらいの現実的な料率が用意されるようです。パチパチ。
発表は明日。
ネットラジオのような「ストリーミング型番組」は相変わらず非現実的?
さてlast.fmlive365.comのようなラジオ放送型の番組配信は、
・ストリーミング型配信 一曲 3.3円
という取り決めに基づかなければならないのですが、
ネットラジオをたとえば1時間に20曲を8時間、 仕事し『ながら』(←ラジオの本質です)リスナーに聞いてもらうと、
1リスナーあたり、528円/日 → ひとつきに20日聴くとリスナーあたり1万円以上の支払い!
という『ありえない』額をJASRACに支払わなくてはいけなかった。
(なんでこんな非現実的な料率設定をしたのか当時は憤ったもんです)
つまり現在の料率取り決めでネットラジオのビジネスは不可能だった訳です。
そこで、新しい概念
サブスクリプションモデル」
(要は月極有料会員制。スペシャ見るのと一緒ですね)
をネットにも設定しようとしてるのですが、

JASRACは収入の10%を大きく超える数字を提案している・・・JASRACも、従来のダウンロード型の「1曲7.7円」という料率をそのまま適用するのは非現実的と理解しつつも、「収入の7.7%」では「割に合わない」との構えだ。

とのことで、しばらくもめそうですね。
それよりも気になったところ

NMRCの佐々木代表世話人は「サブスクリプションモデルを導入する本来の目的は、アーティストにチャンスを与えることだ」として、両者の基本認識のズレを指摘する。

佐々木先生、いいこと言った! これねー。リアルのインターネットラジオとかサブスクリプションモデルとかって小さい話でなくて、 音楽メディアにとってもっとも本質的なところなんですよ。 ここでちょっと音楽メディアがどうやって新人を育てているか、整理してみましょう。
1 既に売れたアーティストをメーカーから回してもらって、客を集める
2 セットで新人を頼まれる
3 売れたアーティストの名前で集まった視聴者に新人を見てもらう
4 そこでしっかり新人の魅力を伝えきって、ビッグになってもらう
5 ビッグになった新人が視聴者を集めてくれる
6 セットでまた新人を視聴者に見てもらう・・・

ね? 音楽は聴かせてなんぼ。この議論って音楽文化そのものに関わる話なんですよ。WEB1.0で削られた音楽売上を、サブスクリプションモデルなどのWEB2.0型音楽放送メディアで盛り返せるようにする。それがJASRAC、メーカー、放送事業者みんなの本当の目的でなかったですか?
着メロ・カラオケでカバーできた著作権売上だけの立場で考えるからそうなるのかなぁ。ネット上の著作権問題は、著作権よりずっと規模の大きい原盤権売上を左右してることをJASRACさんも、もう少々意識していただきたいんですよ。
「割に合わない」ではなく「投資になるか」で判断すべきですよ!JASRACさん!
コンテンツ価値の高い番組をいかに視聴者側にタダに近い低コストで提供するか。 そしてそれによっていかに音楽を育て、プロモーションし、買ってもらうか。 プロモーションの段階で儲けを確保しようとするなんて相手が既存放送でも、これからそんなこと要求できるんでしょうか。疑問です。
■「レンタル型(有期限DL)」は合意
料率は明日発表ですが、 「ツタヤでアルバム借りてiTuneに取り込めば 一曲30円ぐらいで買ったのと同じ」
という現状と比較しても『現実的』な料率になっているか、見物です。
■放送に必要な『著作隣接権』の処理は結局、個別交渉・・・
いずれにせよ、明日の発表で
「これでpodcastingでJ−POPがふつうに聴ける!」 ってことには絶対ならない(涙)のが結論です。
というのは、楽曲を放送するには、
作詞家・作曲家の持つ著作権に属する公衆送信権 は片づいたとしても、 ボーカル・プレーヤーの持つ著作隣接権に属する送信可能化権 レコードメーカーの持つ著作隣接権に属する送信可能化権
は個別交渉になります。
ボーカル・プレーヤーの属する事務所と、
楽曲の原盤権を持つレコードメーカーに都度交渉となる
訳でして・・・
■明日以降、放送局とメーカーの交渉が再開される
(ここから有料 笑)
この記事にあるように、まずはメーカーや事務所と すでに信頼関係を構築している既存放送局に対して、 個別交渉を進めてゆく でしょう。
次にヤフーやニフティなどIT業界出身と交渉が始まり、 独立系、個人との交渉は後回し(TT) になります。
さて、ぼくらの立場ですが、 以上の流れを考えると、今回の件をきっかけに ○○○○○とメーカーとでなにがしかの 進展がない限り、○○○○○で動いても○○○○○の可能性が高いと考えてよいと思います。
しかし、確実に時代は進展しつつあり、 新しい形のコンテンツビジネスに速攻で○○○○○できるよう、 志だけは保持してゆき、○○○○○と連携を上手く取りながら、 新しいビジネスに○○○○○のがよいだろうなと。
いずれにせよ、WEB1.0によって削られてしまった音楽業界を 再生させるのにもっとも大切な著作権の時代適合。 WEB2.0型音楽メディアが繁栄し音楽を盛り上げてゆくためには、 ひとつひとつ、丁寧にクリアしていかなければならない課題が山積しているのです。
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